文献からの抜粋:「偽りの自己」と、「真の自己」/「インナーチャイルド」について

〈「偽りの自己」と、「真の自己」/「インナーチャイルド」〉

「アダルト・チルドレンはトラウマにさらされながら生きる過程で、感覚鈍麻、歪んだ自己認識、そして奇妙な世界観といったものを身につけました。これらを総称して『共依存自己』ないし『偽りの自己』といいます。

共依存自己は個々のトラウマへの仮の修復を繰り返すことによって成立したもので、それはそれでアダルト・チルドレンの生き残りのために必要なものでした。

それはちょうど、『生き生きした自己』ないし『真の自己』と呼ばれるものの上に被せられた外套や鎧のようなもので、冬の寒い風や外敵の攻撃に耐えるためには有効なのですが、一方では『真の自己』を窒息させてしまいます。

その窒息の苦しみこそ、彼らの示す心身症であり、神経症をはじめとするさまざまな心の病であり、嗜癖(依存症)であり、人間関係からの引きこもりであったわけです」

(斎藤 1996, p. 159)

インナーチャイルドは「『生き生きした自己』とか『真の自己』と呼ばれているものと同じです。そしてそれは『共依存自己』、『偽りの自己』などと呼ばれているものと対をなす自己像です」

(斎藤 1996, p. 197)


〈インナーチャイルドとの出会い〉

「共依存自己は、外傷を受けた真の自己の傷が、歪んだかたちで覆われて生じるものですから、グリーフ・ワークを続けていれば、いずれインナー・チャイルドに出会うことになります」

(斎藤 1996, p. 197)

「インナー・チャイルドとの出会いについては、注意しなければならないことがあります」

(斎藤 1996, p. 200)

「私自身の考えでは、過去の自分に出会うという作業は、自発的に、自分の完全なコントロールのもとで、リラックスした状態で行うのがよいと考えています。現在の自分に受け入れられないイメージが浮かんだり、そのイメージにおびやかされたりした場合には、すぐに中止して、別の機会にやってみるというゆとりが大切です」

(斎藤 1996, p. 201)

出典:斎藤学(1996)『アダルト・チルドレンと家族 心のなかの子どもを癒す』学陽書房.

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