〈アタッチメントとは〉
「動物が何らかの危機を感じて不安になったとき、自らを安心させる最も基本的な方法は『他の個体にくっついて安心すること』です」(鈴木 2023, pp. 90-91)
アタッチメントとはこの「くっつくこと」、「特定の対象との情緒的な絆」を意味し、日本語では「愛着」ともいう(鈴木 2023, p. 91、白川 2019, p. 46)
「愛着というと意味が限定されますが、本来は、身体的にも心理的にも、特定の誰かにくっついて安心したいと強く願う欲求や行動の傾向を指します」(鈴木 2023, p. 91)
〈アタッチメントと安心感〉
「幼い頃、こわくて不安な特に特定の大人にしっかりとくっつき、その都度、安心感を得られていれば、その子には『安心の感覚』が養われていきます」(鈴木 2023, p. 91)
「安定したアタッチメントを築けていたかどうかは、心の傷の残りやすさに影響します」(白川 2019, p. 46)
「幼い子どもにとって『くっついて安心したい』『ケアしてほしい』『助けてほしい』という欲求が満たされないことは、存在を脅かすレベルの恐怖になりえることは容易に想像がつきます」(鈴木 2023, p. 91)
「幼い頃から膨大な量の『さみしい』『愛されたい』という感情が心の中に埋蔵されている」場合、対人関係などで生じる「ちょっとしたさみしさが引き金になって激しい『見捨てられる恐怖』に襲われることになります」(鈴木 2023, p. 93)
〈解離と「パーツ」とは〉
「危機的な状況になんとか適応するための、生存戦略としての自分の分裂を『解離』といいます」(鈴木 2023, p. 28)
「わたし(パーツ)」とは「普段の『私』というアイデンティティから隔離された存在」、「解離という手段によって、処理しきれないほどの衝撃的な感情や身体感覚、記憶などとともに封じ込められた存在です」(鈴木 2023, p. 29)
〈見捨てられるのが怖い「わたし」というパーツとどう付き合うか〉
「愛を渇望するパーツとは過去に『だれも私のことをわかってくれない』『みんな自分のもとを離れてしまう』という絶望的な経験をしたがゆえに、人格を解離させて生じたものです」
それは「過去の自分が生き延びるために生まれてきたもの」であり、「抑えつけるべきものではなく、認めて尊重していくもの」
(鈴木 2023, pp. 100-101)
「まずは、トラウマ担当のパーツである『わたし』の感情を、今ここにいる『私』の感情と分けてとらえていくことが大切です」
「パーツが抱えている感情と本来の『私』の感情を混同してしまうことを『ブレンド化』といいますが、とくに愛を渇望するパーツとうまく付き合うためには、このブレンド化をしないことが重要になります」
(鈴木 2023, p. 96)
「『さみしい』『こわい』『見捨てないで』という感情が湧いてきたときに、『この感情は本来の「私」自身の感情なのだろうか』と少し立ち止まってみるといいかもしれません」(鈴木 2023, p. 97)
「もうひとつ大切なのは、パーツが求めていることを、他人(とくにパートナー)をつかって埋めようとしないことです」(鈴木 2023, p. 98)
「愛を渇望するパーツのニーズを本当の意味で満たしてあげられるのは、他者ではなく自分自身です」(鈴木 2023, p. 97)
出典:
鈴木裕介(2023)『がんばることをやめられない コントロールできない感情と「トラウマ」の関係』KADOKAWA.
白川美也子監修(2019)『トラウマのことがわかる本 生きづらさを軽くするためにできること』講談社.
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