手記 インナーチャイルド「リラ」が悲しみを教えてくれた日 2025/1/9

おととい リラに

包丁置いたよ と言いながら近づこうとしたら

そもそもなんで、私にその包丁を刺すなんてことになるのか、

本当に理解に苦しむ

そう言った

そうだよね、とは思いつつも

自己や他者を否定してしまう考えが頭をかすめること

それはどうしようもなく起こってしまうことなんじゃないかと

仕方ない みたいな言い訳が 浮かんで

とてもリラに向けて言えなかった

それは 加虐者たちの言い分だよ

私は痛めつけられたくない

虐げられる側は そう思うんだよ

どんな非があろうと 失敗しようと

暴力を受けるに値するのと同義じゃない


リラ

笑って 遊んで 

好きなことやりたいことに素直になって 

何も恐れず 夢中に楽しく過ごして

うん 外の世界では 誰に何を言われるか何をされるかわからない

覚悟してなきゃいけない

でも その毒を渡されても

リラに飲ませることはしない

ものすごい恐怖や怒り もしくは ヘイトや不寛容によって支配されている状況で毒を渡されたら

冷静ではいられなくて

そんなこと言われたくない、つらいよ 以上の

複雑な自己否定までも

どさくさに紛れて 手に取って飲み込んでしまってきた

これからは違う方法で

傷つくことから私たちを守ろう

これからは 何で傷つけられそうになっても

私があなたを守る

そのとき つらかったら

どんな感情も抑えずに

「そんなことされたくない」というまっすぐな思いで

思いっきり泣けばいい

露出狂に出会って怖かった 気持ち悪かった ひどい 私は悪くない

それくらい あなたに非はない状況なの

泣き止んだら リラはまた笑って過ごせる

これが安全、安心なんだね?

世間が怖く見えたり ひどい言葉を浴びたりするのは避けられなくても

自己否定まで飲み込んでしまうのは私の責任だ

何にも傷つけられないことを目指すのではない

自分は傷ついていない、と跳ね除けているつもりでいる裏で

心が深く悲しんでいることに蓋をすることになるかもしれない

傷つけられたら深く悲しんでいい

だけれど それを

自己の認識を歪めることに行き着かせてはだめだということ


死にたい気持ちが続いていて

手を止めて 心に寄り添おうとしたとき

“슬프네”(悲しいね)と ふと頭に浮かんだ

今日 リラの声を聞こうとしたけどほとんど受け取れなかった気がしていた

でも 何時間か前から 重くのしかかる悲しみに包まれていた

それがもしかしたら と

悲しみが 深く また深く

際限なく広がっていき

海がひとつできたようだ

夜の海辺 仲間たちと 砂浜に腰を下ろした日

穏やかな瞑想に手を伸ばすには程遠く

目の前の インド洋の広大な海さえも

私の悲しみを 孤独を 手に負えないのが 見えた

ああ 私は

底知れぬほど深い悲しみに浸る女性を ましてや少女を

間近で見たことがない

咽び泣く とは違った

涙も流れないような 静けさにも似た 気力というものが通わない空気

これまで「死にたい」という言葉に置換されてきた 得体の知れなかった 出どころのわからなかった感情 重く付き纏うもの

何がその身に起これば

これほどの 夜の山奥のような静かで孤独な悲しみを 救いようのなさを

感じうるのだろう

私はこんなに悲しかったんだっけ

私はこんなに悲しかったんだ

死にたい気持ちなんだと思っていた

なんでインナーチャイルドが死にたい気持ちを抱くのかと疑問に思っていたけど

ああ 教えてくれたんだね 

これ以上なくありがたいよ

無視せずに耳を傾けるとき

本当にいつも 私の心にそっと触れて 伝えてくれるんだ

リラは 笑えるところにいないんだ

彼女の魂がどんなところにいるか 少し見えた

そりゃ 私がワクワクややる気を感じている気がするときに

どこか 足が地についていない危うさを覚えたわけだ

そうか 私はこんなに悲しかったのか

これまで毎日のように突然頭をもたげていた凄絶な抑うつの正体が

その悲しみなのだろうか

まさに 泣き喚く悲しさではなく

ずっしりとのしかかり身動きを取れなくさせる抑うつに引き込まれる

そんな悲しさなんだ

怒りの奥底には深い悲しみがある、という台詞が

子どもの頃読んだ本にあった

誰かを亡くしたときの 悲しみが痛む激しさ

それを局所的だとすら言い表せるほど

私が感じているかもしれないこの悲しみは

失ったものを表す地平線が際限なく続くような

ずっと悲しかったんだね

ごめんね 気づいてあげられなくて

今になってやっとなんて 途方もないことだよ

とことん悲しもう

そうだね 他のことで気を紛らわせてる場合じゃないね

こんなはずじゃ なかった

私が直接でただ一人の加害者だよ 他の誰でもなく

取り返しがつかないほど

私の手で植え付けた恐怖と悲しみとを抱えて震えているあなたに

これからはもう傷つけないって謝りながら寄り添うことに

どれほどの信頼と決意が試されているのか

もう 裏切るわけにはいかない

そして 諦めるわけにはいかない

あまりにも なかったことのようにして

また裏切りそうで 諦めてしまいそうな危うさを孕んでいるけれど

背を向けたら また生きていけなくなる

背を向けるのは 生きるほうの道じゃない

リラ 教えてくれて本当にありがとう ごめんね

リラは 私を叩いてやりたい?

痛めつけてやりたい?

私にとても怒っているでしょう……?

それを問うたとき かすかに見えたイメージは

私の腕を力強く握り

目をぎゅっと閉じ

眉間にしわを寄せて 悲しみを堪えながら

私と額を合わせている リラだった

シェイクスピアの悲劇や『ジゼル』に漂うような

取り返しのつかない悲哀

リラ これまでよくがんばったね

いや 当然がんばれなかったね、だよ

そのとおり……

悲しみを湛える存在

湧水があふれるようなそれは 激情の下にずっと隠れていた

家族の前で 明るいふりを もうできないかもしれない

続く

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