文献からの抜粋:インナーチャイルド(内なるチャイルド)について

〈「スキーマ」と「内なるチャイルド」〉

「認知行動療法」の理論と方法を発展させたものである「スキーマ療法」には、「内なるチャイルド」という考え方がある。(伊藤 2020, pp. 218, 272)

人は「子どもから大人」になっても、いつまでも子ども的な存在(「内なるチャイルド」)がその中にいて、「その子どもを適切にケアできる大人が形成されることを、『大人になる』という」(伊藤 2020, p. 274)

幼少期に、様々な「傷つき体験」や「欲求が満たされなかった体験」を経験し、それらが掛け合わされることによって、「内なるチャイルド」が傷つく。その結果、心の中にはその人を生きづらくさせる様々な「スキーマ」が形成される。(伊藤 2020, pp. 231, 272)

認知(頭の中の現象)のうち、瞬間瞬間に頭をよぎる、より浅いレベルの認知である「自動思考」に対し、「スキーマ」とはそれよりも継続的で深いレベルにある認知を指す。その人にとっての「心の根っこにある深い思い」「信念」「自分や他者、世界に関するイメージ」が該当する。(伊藤 2020, pp. 214-215)


〈「内なるチャイルド」の欲求〉

「生きづらさと関連するおおもとの『根っこ』には、『子どもの感情欲求』というものがあります。これは『すべての子どもにおいて当然満たされるべき心の欲求』のことを言います」

「子どもの感情欲求」の種類:

「①安心したい、愛されたい、理解されたい、守られたい、自分と他者を信頼したい

②自分に自信をもちたい、上手にできるようになりたい、しっかりした自分になりたい、物事にチャレンジしたい

③自分の欲求や感情をまず大事にしたい、自分の欲求を大事にしてほしい

④のびのびと暮らしたい、人生を楽しみたい

⑤ルールを守り、みんなと平等でありたい、自分だけでなく他人の権利も大事にしたい」

(伊藤 2020, p. 224)

「子どもの感情欲求」は、「内なるチャイルド」にもある。幼少期にこれらの欲求が満たされなかった場合は取り返しがつかない。一方で、「今、私たちの中にある『内なるチャイルド』の感情欲求」は、自分自身が耳を傾け、満たすことができる。(伊藤 2020, p. 284 )


〈「内なるチャイルド」のケア〉

生きづらさに関するスキーマは、「呪いのことば」のようで、チャイルドを攻撃したり、無理な要求を突きつけたりする。それらが脳裏をよぎったら、それに持っていかれずに、「うのみにする必要はない」と、そのことばからチャイルドを守っていく。(伊藤 2020, p. 286)

「傷ついた『内なるチャイルド』は、癒しやなぐさめ、そしてケアを必要としています」

チャイルドが泣いていたら、「『どうしたの?』と声をかけ、十分にその気持ちを聞いてから、ケアする」

ときには、自己主張や挑戦を躊躇しているチャイルドの背中を押す声をかける。

(伊藤 2020, pp. 288, 290)

「スキーマ療法で最も重視されているのは、つねに『内なるチャイルド』にアクセスし、傷ついたチャイルドを癒し、チャイルドが生きたいように生きるのを応援すること」(伊藤 2020, p. 292)


出典:伊藤絵美(2020)『セルフケアの道具箱 ストレスと上手につきあう100のワーク』晶文社.

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