〈報告〉日本詩歌句随筆評論協会賞詩部門優秀賞に選んでいただきました

拙作「見捨てる者たち」に、2025年度第21回日本詩歌句随筆評論協会賞 詩部門 優秀賞を授与していただきました。

日本詩歌句随筆評論大賞・協会賞 結果

今年の5月に詩作を始めたばかりの者の拙作に、このような身に余るご評価をいただき、恐れ入るとともに光栄に思います。

(受賞作はこちら


私が申し上げるまでもないことではありますが、暴力や人権侵害にさらされる側の人々や、その発生を防いだり傷ついた人々を支えたりしようと奮闘する側の人々の立ち位置は、この社会の力関係を考えると、許し難いほどに圧倒的に弱いものです。身を砕いて抵抗する人々もあまた存在する一方で、その動力を消え入らせようとするかのように、それはほとんどことごとく無視されてきました。

戦争や他の様々な形の暴力、人権侵害の被害を被る人々は、どんな訴えを人知れず叫んでいるのか、という軸に立とうとしたうえで細切れに綴ってきた言葉をもとに、拙作「見捨てる者たち」を書きました。それらの言葉は、私の胸に日々込み上げる、彼ら彼女らのものに似ているかもしれない怒りや悲しみ、また、半ばフラッシュバックのように私の日常の中で突然湧き起こる、被害者たちの無念さや極限の恐れが生み出したものです。

(抑圧の程度は大小を順位づけできるものではありませんが)次元は違えど各々がなんらかの被害や受難を抱えつつも、自分の受けていない被害に対しては消極的な姿勢で安住している人々も、私を含め、多くいることと思います。その二重性や甚だしい矛盾がこの社会に満ちている、という世界観を提示しようと、拙作では試みました。

拙作では、私が社会運動に関わっていた時代に参加した反戦デモの様子も描かれています。その間にも毎秒毎秒人が亡くなってゆく戦場と、デモを弾圧するための警察もいないなか誰が決死の覚悟でここに並んでいるのだろう、と問うしかない何百人もの行列、その二つの空間の隔たりを私は生々しく感じていました。

この瞬間に命を落としていく人を思い胸が張り裂けて流れる私の涙は、活動家仲間たちの視線によって、行動だけがものをいうその場では意外なもの、より正確に言えば意味のないものとされました。

それから一年以上経って私は詩作を始めました。拙作を書くなかで、圧をかけられるままにそのデモにおいて自分の手で捨てたもの、不要とされた感情の揺れ動きに、再度向き合えた気がしています。


書き手としての成熟を少しも遂げていない私の作品はどれも非常に荒削りで、今回賞をいただいたことは恐れ多い限りです。温かいご評価を励みに、改めて気を引き締めて日々の詩作に臨みます。

2025年7月22日

白木ニナ

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